総決算

結城永人


あっという間に消えて行った理想的な人は僕を気に入っていたのかしら。乗りかけた電話で振ってしまったけれども揺れならば止められたはずと思いたい。あっという間に消えて行った理想的な人なので、敏感に物事を察知して自分だと断り捲れなかった。僕が受けた苦しみよりも多く悲しんでいたならば。あっという間に消えて行った理想的な人こそ二人を駆け落ちして貰いたかった。死ぬまで思い描いた僕にとっては生まれ出したと聞き付けられるから。あっという間に消えて行ったとしても。賭けた理想的な人を食い下がらないような僕だった。遅蒔きながらの声には甘さを送り返されてたんだ。飛んでもない。僕自身が否定されていたなんて。少しだけ色気を感じた。恐さも。あっという間に消えて行った理想的な人は予告されない労りを。気が引けた僕は考える。