Prologue

心の畑を耕すとき


Scene 1

天使以外の近寄りを断る
本当だ
嘘ではない
ちっぽけな人間臭さでも立ち入りを禁じると
魔法の言葉でしか得られない作物があるんだ

Scene 2

準じるや異性かも知れない
たとえ気に入っても縦書きか横書きの違いというな
野菜を
同情ならば全て井戸に沈むだろう
まるでブラック・ホールのように吸い込まれる

Scene 3

吸い込むのは掃除機のノズルか
確かに似ていて象も耳をぱた付かせる
近未来的な景色だ
高速道路の八重洲インター・チェンジこそ頭に残るが……
ともかくうねうね回りながら空こそ開けていた

Scene 4

濃い緑の低い森が刈り入れ後の田圃を挟んで延びるばかりの
恋人探しかも知れない
勝手なことをいいながら誤魔化しているつもりではなく
三期目なので
親しみしか奮わなくなってしまったとか

Scene 5

籠一杯の茄子らしく蓄えずにはいられないようだ
手拭いで吸収した汗は素より
へのへのもへじも御飯茶碗の柄ならば
落語の高座と寄席で笑い転げた客たちが少しずつ潮を引いて行くのだった
海は荒浪によって俄かに暗転した空を押し返しながら

Scene 6

右下隅に血痕のある
白地図へ
日本列島の
降り出した雨が物々しく点描を打つのだから
終局

Scene 7

傘を差す間もなかった
念じ込んでいると
様々に世話を焼いて貰えるのも良さそうな身持ちになり
内面の綺麗さに優る
取り決めもないのではないか

Scene 8

自身において根性にとって
愛苦しい星たちというものは
如何にも
手を付ければ鉤型に曲げた肘を捻りながら見出される
港の埠頭辺りでクレーン車が何台も並んでいたりすると胸が震えるほどの感覚を被ったかぎり

Scene 9

灰色に空を棚引いている雲の
ざっくり大味な気配の元で
自由は外された右手の中指の指輪のルビーのように
澄んだ炎を早速と催させて止まなかった
考えてや正しくだ

Scene 10

望むだけで細くなった太股で意欲の重要性を説くにしろ
資質が問われるまでは
力も咲かないのだから
いっそ雪割草を捧げるしかない
受け取って貰えたらどんなにか元気に違いないと想うので

Scene 11

腹筋が凝れ
ムエタイの真似事に励んだりしたのも
当たり前なんだ
出会いを動かすのは並大抵の策動ではない
誰にも不可能だと喚かざるを得なかったりもする

Scene 12

羊水の中の胎児が
余りに静か
却って
過ぎるにしろ
山頂へのふりかけに等しくて

Scene 13

あり得ないくらい報いられたにも拘わらず
なんて“叡智”だろう
目に見えない途方もなく大きな実体に自然がきっちり包まれていた
ピーチクパーチク
近所の小鳥と共に朝が来て

Scene 14

メッセージも届いたのだった
通って行く昔馴染みな鳥居の柱のどちらかしら
均しく断面図を指し示している鉄則は洗濯機では必ずやないにしろ
愛×存在÷二人=安寧と読み取られて
かねてよりも経験されなかった対象へのジャンプをむしろ

Scene 15

暗に仄めかしているせいか
掘り下げよう神経は生卵の鉱脈を探り当てたんだ
固くても柔らかくても構わない
歴史を過ぎ去るままにしてはならないとしか掬えない喩えだった
極太のペンで真しやかに囁かれるほどのオススメでも

Scene 16

うししで
異論の生じ得る隙間も伴わなかった
長丁場なのは認めるし
旅の途中と
休みがてら俳句を詠むべきでは脱線するものの

Scene 17

青草や森の木陰の毒茸
といった受けるんだ
そのあのこの
風情を
串刺しの印象とは屋台骨を失い

Scene 18

制服を畳んだ石像ではなかったのも
すなわち暴風雨が帰宅していて
気がかりは靴下ばかりかボストン・バックでさえもあり
錆止め加工済みの食い付きを引き離してみるや
ボウッ

Scene 19

まるでマシュマロが広がるために
枝分かれした
軌跡を描き出して来たのではないか
いても立っていられなくなり
強く深く重く覚知されるのだった


Epilogue

負けてはならないと


結城永人の長篇詩:全一篇