逃亡手記

結城永人


好きだから自分を分かって欲しかった。卵から雛が現れるように知られないのは止めたかった。この想いは優しさだけでは募るばかり、別れを認めた上で、未知へと突き進んだのさ。何て寒さだい! なぜ恋人がいないか? 僅かな疑い、寄せ切れない心根が酷くなり、失意、僕が離れたかったのに君への真っ直ぐな気持ちすら保ってはならないなんて間違ってるから……。いっそ苦しんでるのは僕じゃないはず、愛された確かな感触を君の思い遣りで受け取ってみれば。どんな夜だって燃える涙が炎に変わるのを天使は見落とさなかった。そんな風に独りで強くいられたんだよ。君は妖精みたいな綺麗な背中に翼を備えて白鳥のように飛び立ってしまったけど、憐れむな……、僕は友達にならなくて良かった。

波に疲れて嵐に飽きる。きっと君は僕に自信を与えてくれたんだろう。素敵な勲章、形に表すのが惜しい事件……。いつか花嫁になる人がいるんだ。そう思えるよ。まだ僕は緑の海を見付けたばかり、人魚と爽やかに泳いでる。余り期待しすぎると幻滅するとか窘められるけど、隕石が落下するように衝撃的な象牙色の浜辺で、切り株に座り込みながら揚げ羽蝶に話すのは仮初めの花言葉なのさ。捲るめく。十八歳の午前七時に描いた空は彼女の淡い桃色の憂いこそ甘やかに澄み渡らせた……。今は夢の途中と言う。海よりも濃く青い空を見せてあげたいな。君の手錠が愛しい。