ミューズ

結城永人


謀らずも噎せ反る
命の春の色香の尊さよ
犬一匹が掻き出した
麗しい定めを握り締め
玄武岩で象嵌した宝飾品も
如何に比類しないか

憐れみよ
筆頭菜が揺れる小川の畔へ
導かれた麗しい定めだ
詩人を介抱している
第六感の力量も適わないと
泣き喚く涕洟こそ

木霊が轟いた
梟は翼を広げて飛び上がる
割に合わない野鼠も
動きを止めて嗅いでいた
終夜は寝休まる斧の
麗しい定めへ与かって

只管な幌馬車は
峠を越えるや麗しい定めと
祝いながら林檎酒で
解け合えては笑い転げる
家族を牽くべき愛馬も
奔走する日だった

麗しい定めならば
何故に強請るだろうか
薊が閃くと聖所でさえも
拝みたいばかりの気持ちが
蚕へ蟠らない天使さ
踏ん張ってみせろ

絶好調さ
切り計る生も漲るかぎり
貧しさを撫で摩られる
風通しと呼応して普遍まで
速やかな麗しい定めに
浸れるのだから