嬰児

結城永人


僕が裕福ならば猿や犬を見せてあげたい
山野辺の柿を取っては食べる猿の可愛いさ
尾を振りながら河原で水を飲む犬の可愛いさ
貧乏だから見せてあげられないかも知れず
気落ちするが嬰児を抱くと非常に愛らしい
歌う鳥や描く亀だって僕が優秀ならば
きっと教えてやれなくはなかった
広大な山野辺を緩慢に飛んで来た鳥がいて
亀は河原の敷き詰められた石を着々と歩み
親しみながらも嬰児へ教えてやれるかどうか
愚劣では著しく疲弊せざるを得ない
もしも僕が卑怯になろうとしたくなくて
万感の想いを一身で受け留められるかぎり
聞かせてくれるのは螻蛄が掘った山野辺なんだ
岸壁も峻険な河原に目高は濃く群れ集う
嬰児を恋しめば聞かせてくれない――
実直であるべきという天性だった