撫子の鷹も敏捷い

結城永人


抱き抱えよう。たとえ蜘蛛の巣が張っても蝶は飛んでいる。世間の狭さは苦しい僕だった。肩入れした議論に遠慮するな。談話したい。子犬こそ街中でブラブラしている、旨い骨を捜し求める時分なのか、吠えもしないで。哭いていた子猫は部屋を後にしながら寒空の下でオリオン座を見上げたのだった。引っ掻きたい気持ちを不審と置き換え、僕へ内密にした木犀草の脇道を通って出て来た中庭は病院と食堂と山脈と学校で包囲された仮想の立脚点である。子猫は自惚れもせずに我と我が身を夢で保とうと運勢の象徴だった棍棒を振り翳す偉人へ直面しつつ凝視しないではいられかった。恰も食い入る如く。おおいぬ座、こいぬ座が呼吸を抑えた。閑静だった。住宅地に過られる後頭部は痛くも痒くもならず、そして冬の夜闇へ物々しさを集積する緊迫した気持ちが子猫に言語を呑み込ませる。吐き出した瞬刻に星たちは明るさを増した。永遠ともいうべき衝撃が奔り、かくは持続的な皮膜で被われるみたいな状態へ連れ戻されてしまうのだ。止んだ風に余韻する雲の浮かび漂える様子。偉人も少しずつ、だが、暫くは堅く膨れた陰影を打ち崩さないまま、いなくなる。荒み、子猫は再び哭きながら本道を歩みたかった。未明の都市が交通量を減らさないとすると轢死したのである。遅々と進んだ。どうすれば丈夫だったのだろうか。子猫は神格化した原因性の陣地へ爪を立て、一つの恩恵に与かり、肉球が生じさせる結果こそ喜んで、殆ども軽薄に及ぼす仕方で扉を擦り抜けた。僕は施錠しないで、待ち構えると心臓が喉元を突き破る情動だった。縛り付けられた強度の紐帯の子猫へ幾つかの立体的な罵声や怒号も太陽で昇華される頃には問い糾したい本意があるのだ。懺悔するべき温情を贈れるか。舐められて摩りつつ。