忍丸武勇伝

結城永人


逃げ隠れを行うべく
背中に刀を差し
頬被りをして
ドロンと煙で巻きながら
撒き菱も放てば
誰が追って来られようか
水上も走る
潜るのも術中だ
何かに迫られるや
鉤爪のロープを投げ遣った
登り捲り
長らくバテないで
野道を駆けた
行き止まりの断崖も
まるでムササビのように
降りてしまう

公表できない
極秘の責務を帯びて
流れ去る

元々は機密を任された
将軍も倒され
一味が没落した今日では
忠信の役目もなく
ただ人情だけが残る
懐の手裏剣を
血塗れにした経歴こそ
戦乱の世の中の勲章なのか
吹き矢も毒も
用事がなくなった

改めて重責が
担われているのだ
殺し合うな
慢心するよりも

忌々しさへ
落とし穴を掘ったり
網を貼ったりもしていた
謀略の数々は無益だったと
内省せざるを得ない
思いの丈が伝わるのか
届くのかどうか
断腸に代えて
書を認めた
傲っては生き延びない
遺憾でなければ
露骨だろう
僻んでは明かせないにしろ
サッサと踏み切るのも
動じたくない