水槽劇場

結城永人


蘭鋳が水草を掻き分けた
幾らか気泡を浮かべつつ
水草は残留に撓り垂れ
半ばか印影に振れるまま

天辺の蛍光灯が照らす
蒼白の立方体の只中で

夕映えは悠々と舞ってた
銀鱗を翻すのは労しない
日暮れは坦々と飾ってた
緑素を呈すのは及ばない

一隅の回転車が添えた
巧妙の周期律の突端で

山並みは泰然と踊ってる
尾鰭を禁じずに遊ばせて
道行きは釈然と謡ってる
葉脈を侵さずに脹らめて

蘭鋳は泳いだ
水草が揺れた

午後五時の陽光を受けて
際立つ橙色に染まりつつ
水槽劇場の舞台を通じて
憂愁の落日に浸れるまま

蘭鋳が泳いだ
水草は揺れた

斜陽が十度と差し込み
窓辺へ明るく迫り来る
瞳孔を刹那と引き絞り
金箔へ実多く塗れ出す

眩しさは溢れるほど散った

瞬間の幻想に
嵩張る面輪に
格別の演義に
棚引く日没に

蘭鋳は砂利を吸い出した
幾らか塵埃を撒かしつつ
砂利が過渡に漂い落ち
半ばか叙事に容れるまま

底面の水苔類が反した
鬱蒼の多角体の只今で

衣擦れは堂々と奏してる
頭瘤を顕すのは厭わない
機織りは銘々と臨んでる
硬質を示すのは能わない

些末の架橋具が付する
微妙の波動律の片端で

花開きは俄然と趣いてた
背筋を負わずに憩わせて
世連れは判然と向いてた
材石を怠けずに捲らして

蘭鋳が泳いだ
砂利は沈んだ

今年七月の風潮を認めて
勘繰る弱音に馴らしつつ
水槽劇場の舞台を通じて
哀切の兆候に耽れるまま

蘭鋳は泳いだ
砂利が沈んだ

微風は八方と吹き流れ
机上へ騒めく寄り着く
鼓膜を呵成と押し広げ
高位へ素早く弾け飛ぶ

久しさが詰まるほど崩れた

地所の夢想に
条張る体躯に
異例の芸当に
畳掛く啓発に