敵わない貴方こそ

結城永人


片割れの桜桃を投げ落とした
沼は執拗に黒光りしているが
記憶を沈め去るに任せたまま
思念も呑み込まれて行った

停められた自転車は小さい
切り株を跨いで風を封鎖して
涙の井戸も汲み上げられると
鳴く鶯の声が忽ち通って来るし

弁当箱を開けて胃袋を満たした
水筒の飲み物で喉も潤してか
草地で引っ繰り返ってみたんだ

胸の上に紋白蝶が留まるので
却って動かされない現実だった
過ごし易さに一眠りしておく
少しだけ軽くなる心情だとわ