金蚊が遣って来た

結城永人


円盤型の蓋を引き上げる
水底から圧力を受けながら
紐が切れるかも知れないと
手繰る腕に緊張が走った

物事の過程しか興味もなく
目的や結果も要らないとき
関心のある対象は触発的で

金蚊が遣って来た

命一つ包まずに
緑の背中に黄の光沢こそ放って
太陽が覗いた縁側を
のっそり進んで行くのだった
飾りの掛け軸は揺れている
年老いた夫婦も昼寝か
尻尾を立てて嗅ぎ付かれ
身を固めているや
子猫のそばで

金蚊も遣って来る
金蚊で遣って来て
金蚊は遣って来い
金蚊が遣って来た
金蚊の遣って来れ

高く上がる花火が失せると
寂しげな虚しさに襲われるんだ
況んや気持ちも一杯では
必要を迫られる仕残しだけに
泣きは入らなかったし