月が泣いた夜の冷たさ

結城永人


どうして思ったの
自分だけで抱えながら
生きて行くつもり

放ってはおけないよ
甘辛く煮たもつ鍋のように
好きにさせることなんて
詩人でもできないのさ

笑ってごらん
笑って笑って
存分に笑ってからでなくては
好きが掴めない
笑い過ぎるくらいで
恰も二重丸の掴みだもの
極みだろう
内面的な

引いた手を
温めるよりも
優しい青はなかったと
手を叩いて赤ちゃんが見える
なのに押した手で
世の中は一変してしまう
手を伸ばし
募った恋しさにも拘わらず
視野は煙たく
溶け出す

春が近いためだね
どうして思ったの
自分だけで抱えながら
生きて行くつもり
三月下旬の開花宣言わ

遅かった
確かに無理だ
歌い返そうとしても
時間は待っていてはくれず
巻き込まれざるを得ない
濁流に呑み込まれつつ
光の輪を潜り抜け
好きだと告げる
上がり切った
空気を打ち破っても
まるで存在しないように
静けさが張り付いた
祈りしかなく

越えて来た
山の大きさで
ジグザグと受け取られる
嬉しさも溢れるほどの
情の交わりを
置き去りにしたくはなかった
細部へ至るまでならば
記憶にも新しく
考えなくてはならないために
深入りしてでも
蹴り出さずに愛苦しくは
暴かれた形によってか
放っておきたくないんだ
樫の木だろうと
そばにいなくなるとしても
薙ぎ倒さず
ずっときっと
立ちはだかる世界で花と
初めて一輪挿しを
眺め込むにせよ
コップの中で乗り出した船が
底知れないものの
絵本を開くだけでただ
凝り固まって
微睡みと共に堪らなくもか
離れ去るにせよ

歩み寄りを
待たずにして
叶われなかった日々とも
胸へ幻は
訴える