肯い兼ねて斃るな

結城永人


生活には何が必要か
笑顔が一番といえどもアイロンがけに失敗して幸せな気持ちになれなければ
香ばしい焦げ目の焼きお握りが蜥蜴だから穴の空いたシャツの向こうに眠りがある
崖を感じた
水が落ちている
滝だ
横長に
開けて
古ぼけた写真でしかない
悲しみと共に問う
生活には何が必要か
忘れてしまった
覚えてやしない
二三週間前の講釈の続きが思念になく
記憶ももはや切れているかぎりでは
考えなくて良かったようなまるで経験だった
星が流れている
夢を乗せて
僕たちの喜びだろう
幸せな気持ちになれるとすると
むろん間違いない
生活には何が必要か
抽象的な魅力に駆られて音楽ばかり聴いているところにせよ
カレー・パンを頬張りながら鑑賞するジオラマに
迷い込んだ野鼠が人の手の及ばない華を添えるにしろ
個性上の爆発の
甘さという甘さを
掻き集めているのに
涙が零れ出した
生活には何が必要か
ムール貝と
オマール海老に
象徴される皆の匂いは
平熱で殆ども
寒過ぎるわけではないものの
厚手のコートを着込んだ
エメラルドの眼差しを
伏せずにはいられなかった
朝が来て
光は弾け
葉も躍る
生活には何が必要か
稼いだ時間で
バチを打つ威勢良い太鼓の音に
胸も言葉を抱える
表立って引き出されないまま
蜜蜂が飛んだ
セイロン・ティーを飲んでいるや
山となる全てが恋しいといった衝動を伴って
打ち貫かれた
微塵の隙間もない
生活には何が必要か
遠い出会いだ
息も絶え絶えだった
祈りへ励む
意志を高めなくてはならない
真実に訴える
健やかな
地球で