爪痕

結城永人


鯉が泳いでいる
カルナック神殿の近くで
焚き火を囲むはずならば空想だ
ナイル鰐か
実家の池のどちらでも
手は挙がる

富士山の八合目から
突き出して来る螺子回しは誰のものでもなく
傷んだ写真の
隙間風を越えたところに
飛んでいた雁が視界をゆっくり逸れて行くや否や
朝早く湯あみされた
風呂場の脱衣所へと
太陽は目を瞑るのだった

森が走り
石臼は嘆くように倒れ
カムチャツカ半島も急いで後を追った
早いのはケチャップだ
死ではない
まるで訴えている
エリマキ・トカゲの獅噛み付く
ペルシャ絨毯を焦がすな
尻こそばゆい気がして

釘を打つ
胸は刺さない
除外されたエクソシズムか
蛇腹状の置物ならば
玄関先で恐らく
帰りを待っているかも知れない
懐かしい人間性の
決まりが悪いと
力が入らずにいない熱も籠る
動作だ

犯した罪を
自身で裁いて償った青年がいる
実際は勘違いだった
愛に騙されたよりも
恋が読めなくてこそ
青年は人混みに紛れて打つかり合った親好の薄い乳房へ
嫌らしさを企てるしかなく
罵りを噛ましながら
泣きじゃくった十五年後に
額が晴れたと感じたかぎりか
輝く星へ青年も
正義を宣った

こっそり
氷を溶かしたまま
奥まった水を溢れさせる池で
幾つかの光も滑らずにいず
辺りへ凛とした佇まいが生じた
空気は静かに
流れてしまうようだ
瞬く間に生きるといった
考えを抱かせる

狼の五つ子が
出回っているとすると
インドネシアが想像されたのは
生活苦のためらしい
さもなければ地だ
空洞化した道筋がある
平和への