魔法が解けない

結城永人


何度目かは忘れたけれども
心配そうに顔を覗き込む仕草に惚れた
小首を傾げて歯に噛んだような
僅かながらの上目遣いが余りに可愛過ぎて
微笑みを返さずにはいられなくなり

どう思われたのかな
気になって仕方がないよ
嫌われてなければ良いと考えるだけ
仕様もなくて目で追うばかりで
分かるはずなどないのにね
どう思われるのかな

ワルツが広がる
天使の涙が降り止まないとしたら
リアルには背かないで
美しい人生の幕開けなのだから

できなかったことがある
はっきりいって
ギンガムチェックのシャツを着られない
釦を留めるにはどうすれば
手が動かないし
指も固くなってしまうんだ
プラスチックの丸みへ向かおうとしては
爪が滑り出すなんて
木綿の糸で縫われたギザギザにも
痛みを感じるなんて
他のシャツを選ぶしかなさそうなので
力は貸して欲しくない

優しさを得られた
蔑みもしないで聞いてくれて
空は見違えるほどの青さに喜んで
全てを出迎えてくれるよう

ちゃんとした人だな
不思議なくらい読めている
呼んでみたくもなるわけだった

独りでに振り返られる
絶対に離したくなかったみたい
待ち望まれた自由だろうか
遠ざけるにも忍びなく
付いて行くしかなかったと

男は満足して倒れた
女は納得して堪えた

なぜか知っている
二人とも誰かに似ていて
日頃は易しく
壁際は難しく
どうか消さないで
両方ともピザがあるゆえ
彼氏は楽しみ
彼女は幸せで

意地悪になっておしまい

願っていたはずの
レオタードとレッグウォーマーを探して
箪笥の中を掻き回していたら
ゴキブリも出て来ないし
本当に驚かされるにせよか
まるで三千年の夢から目覚めたかのようで
若々しい楓の並木道をトコトコ過ぎると
タイムカプセルを堀り当てて
何時以来とやおら震えながらも
財宝の山はブラックホールへ吸い込まれ
風に抱かれて落ちて来る地図も
ぐちゃぐちゃで判然とせず
人は簡単に変わるもの

なんだ
仲間たちが拍子木を打つ
なんだ
仲間たちが密談を交わす
なんだ
仲間たちが散ってしまう

感じたのかい
楽譜には記されない
クレッシェンドを

嗚呼
小さな煌めきや
駆け抜ける青春だった
胸を透かせる