Section 13

結城永人


鉛筆の芯が折れると
手紙の言葉も太くなった
威勢良く捲し立てられたら
火星は極めて遠いにせよ
子猫とも可愛がるはずだった
窓際の机に置いてごらん
砂粒を掬うような婀娜めきで
火星は極めて遠いにせよ
黒潮を渡る真鯛も正しくは
岩礁に踏み止まっていて
鋏を掲げる毛蟹へ尾を振った
火星は極めて遠いにせよ
交通渋滞も面白いか
都心の影に浴びれがてら
窒素でさえが耳新しかったり
火星は極めて遠いにせよ
拳銃射撃の二三発だ
轟かせては否酷かった
生き得る世界は素敏捷いし
火星は極めて遠いにせよ
伝説を訪ねる暇もなく
魔法の杖が頼りと感じたまま
頭も幻で包まれた
火星は極めて遠いにせよ
地元の明るさを増す
早起きでもしておいで
杏仁豆腐が粘付く口なんだ
火星は極めて遠いにせよ