Section 3

結城永人


かつて落武者が握り飯を食べた後に置き忘れた鉄兜の朽ちかける洞穴があった
戦乱の世を憂いつつも再び出撃したのだと消えて見えなくなった足跡を指差したり 頭に浮かべては口々に噂したりする近隣住民が取り壊しにしたのだが
危ないとされる地滑りを起こした切欠は羆が餌を取り損ねて崖を落ちたためだった
洞穴は一部に入り口を保ったままの状態で塞がれていて少しずつ崩れ始めていた
皆が目にするや否や完全に埋めた方が誰かしら出られずに死ぬこともないだろうと
考えるようになって一斉に取り壊しが行われて以来は幽霊も住処を追われたみたいだった
現在では木の芽が並ぶ入り口の辺りを飛ぶともなく揺れ回り
物好きが持ち帰った鉄兜の展示室ではなくて土に重力が刻み付けた空間を目掛けてか
跳ね返りながらやんわり向きを変えては又おどろおどろしく転がるのだった