驟雨

結城永人


居たたまれず 手を焼いたと
思えた仮面を 回り込む竹林
膝を抱えつつ 何食わぬ顔の
妖精に貸した 耳へ鳴り出す
センチメント 張り詰めては
石垣も溝鼠も 湿らす驟雨だ

居たたまれず 首を切れたと
感じた爆薬を 滑り込む山野
腕を組みつつ 他愛ない指の
妖精に掛けた 目へ映り出す
センチメント 引き締めては
藁塚も頬白も 濡らす驟雨だ

居たたまれず 腹を割れたと
考えた小刀を 転げ込む岩窟
胸を張りつつ 素知らぬ額の
妖精に添えた 口へ溶け出す
センチメント 弛み切っては
土塀も飛蝗も 滴らす驟雨だ

居たたまれず 骨を折れたと
察した荒縄を 飛び込む崖下
頭を振りつつ 屈託ない声の
妖精に向けた 背へ追い出す
センチメント 凝り捲っては
泥沼も紺菊も 曇らす驟雨だ

居たたまれず 胸を刺したと
案じた真綿を 落ち込む海辺
鼻を曲げつつ 誰構わぬ鏡の
妖精に寄せた 肌へ触れ出す
センチメント 打ち揺れては
路地も桜桃も 溢さす驟雨だ