夢見図鑑

結城永人


火を噴いて山野が燃える
炎を興して山林が滾れる
火の海の如く恰も呑まれ
炎の車の如く恰も曳かれ
焔は揚がる所為を縦乗り
焔は舞える所為を横揺れ
明々と叩き毀れた粉々に
熱々と溶け出した沸々に
燠が埋める地殻を発って
燠が掘れる地盤を貫いて
恰も被せた笠の紐の如き
恰も刺した鍼の莚の如き
古今を緊める煙は宙吊り
古今を圧する煤は相俟り
潰れた暗澹に黙示と昇れ
濾した執拗に徴候と暢び
樹木が焼ける列柱の火で
木炭が焦げる紅蓮の炎で
巨きい円環へ覆われつつ
豊かな球体へ囲われつつ
枝葉は爛れて落ち降れた
灰汁は膿んで垂れ提げた
何とも炙れる不惑の焔だ
是とも燻せる染朱の燠だ

土を載せて渓谷が塞がる
砂を詰めて渓流が封じる
土の渦の如く恰も巻かれ
砂の房の如く恰も距たれ
石は転じる所為を前倒し
石は辷れる所為を後押し
朗々と突き破れた段々に
重々と盛り込んだ朦々に
岩が積める地殻を掠って
岩が抉れる地盤を斥けて
恰も撲てた楔の鋼の如き
恰も唸れた蜂の巣の如き
古今を搾れる埃は先取り
古今を縮める塵は元通り
曝した混沌に契機と泛き
捏ねた倦怠に縁起と紛れ
河床が涸れる布陣の土で
岸壁が渇する白妙の砂で
豊かな局面へ臥されつつ
冷たい線形へ措かれつつ

水を湛えて惑星が脹らむ
液を修めて遊星が高ぶる
水の邸の如く恰も造られ
液の竿の如く恰も掛かれ
雫は泳げる所為を上回り
雫は潜れる所為を下向き
易々と蹴り摧いた散々に
汲々と捺り付けた端々に
露が溜まる地殻を沿って
露が延びる地盤を透いて
恰も弛めた軛の枷の如き
恰も抜いた栓の甕の如き
古今を擦れる苔は奥行き
古今を磨ける黴は間取り
崩れた放漫に奇蹟と彳み
熟れた退屈に瑞兆と仆れ
公転が溺れる鉄壁の水で
配置が陥れる濃藍の液で
冷たい角度へ追われつつ
柔かな弧状へ押されつつ
自転は腫れて枯れ朽ちた
軌道は窮して裂け剥けた
何とも濁れる超絶の雫だ
是とも淀める彩青の露だ

風を煽って天空が荒れる
嵐を催して虚空が乱れる
風の罅の如く恰も割られ
嵐の堰の如く恰も切られ
雷は馳せる所為を斜掛け
雷は攣じる所為を旋曲げ
轟々と投げ抛った早々に
縷々と注ぎ込んだ並々に
光が掬える地殻を弾けて
光が溢れる地盤を徹して
恰も噎せた井の鉤の如き
恰も匍えた蛇の塒の如き
古今を劈ける凸は内振り
古今を晦ます凹は外払い
長けた静謐に寓喩と漾い
喫した貪婪に裸像と凝り
日向が凋める総勢の風で
野鴨が窶れる黄味の嵐で
柔かな区分へ急かれつつ
激しい帯域へ伸されつつ
日陰は饐えて凌ぎ削れた
野鴨は衰えて鬩ぎ合えた
何とも灯れる秘奥の雷だ
是とも耀ける着金の光だ
河口は灼けて萎び折れた
岸部は乾いて歪み割れた
何とも固まる無尽の石だ
是とも干せる塗銀の岩だ