濃霧

結城永人


何れにしても目に浮かんだ太陽ではない
幻想的な木立の中を取り巻いた記憶の群れは
手応えも虚しい落葉の銅板画と
綴られる風へ引き渡される

嘗て見たのが夜啼鶯だったかどうかは怪しい
水辺には名前が沈み込んではいなかった
恐らく泳げるなら真夏なんだろう
空想しようと本当に可笑しい

視界を横切る雨は何となく曇らせながら
徘徊する気持ちを押し留めてしまう
恰も古式の人形劇の如く

霧が濃くなるのを何よりも掴んでいた
未だ寂しい光が見えなくて

夢想的な郊外の旁を追い立てる思念の集いは
足掻きも倹しい裏庭の輪舞曲や
纏われる塀へ押し放された

予て聞くのが黄金郷なのかどうかは訝しい
沼地には神話が築き上げてもいなかった
恐らく憩えるなら健康なんだろう

海岸線へ近寄り
心魂を斜交う泪は何となく蒸らしながら
停滞する面持ちを引き返してしまう
恰も珍妙な映写幕の如く
踏み締める路上……

霧が濃くなるのを何よりも捉えていた
既に淋しい音が聞けなくて